外壁塗装は大変トラブルが多い業界でもありますから、トラブル対策として契約書類の確認は徹底して行う必要があります。
大変残念なことではありますが、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの『住宅相談統計年報2023』によると、契約と工事の内容が異なるという相談件数は相談件数全体の20.9%にも及んでいます。
ただ契約後に万が一トラブルに遭ってしまっても、契約書類の項目をきちんと確認することで業者対応で修繕してもらうことが可能です。
外壁塗装における契約書類をそれぞれポイントと共に画像を使って詳しく紹介していきます。
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記事サマリー
外壁塗装の契約書類一式
業者を選んだら、工事の完成を約束する工事請負契約を結びます。
いくら近所の業者や友人からの紹介であっても、契約は口約束では行わずに必ず書面で交わすようにしましょう。
説明もそこそこに、その場で判子を押すのもよくありません。
内容をきちんと理解するためには、説明を受けるだけでなく、じっくりと確かめる時間が必要です。
出来るなら事前に契約書類一式のコピーをもらってゆっくりと確認するとよいでしょう。
外壁塗装の際に必要となる契約書類は以下の3点です。
- 工事請負契約書
- 請負契約約款
- 請負代金内訳書
工事請負契約書
(建設工事の請負契約の内容)
建設業法 第三章 第十九条
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
五 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
六 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
七 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
八 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
九 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十一 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十二 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十三 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十四 契約に関する紛争の解決方法
工事請負契約書とは、工事の完成を約束する契約を結ぶ契約書類です。
工事請負契約書は、建設業法で定められている内容が記載されています。
契約に関する重要な項目が記載されています。
契約書は同じ内容のものが2通用意され、どちらにも契約金額に応じた収入印紙を貼り、判子を押し、それぞれ1通ずつ保管することです。
収入印紙代は、注文者、請負業者それぞれで負担することです。(見積書では諸経費の項目に収入印紙代は含まれています)
工事請負契約書のチェックリストは以下の10点です。
- 名前が間違っていないか
- 業者の名前は正しいか
- 工事現場の住所は合っているか
- 工期の確認(着工日と完成予定日は入っているか)
- 請負金額は合っているか(総額だけでなく工事費、消費税などが入っているか)
- 工事代金をいつ、いくら支払うか記入されているか(ローンを利用する場合には、支払日に注意)
- 請負契約・約款は付いているか
- 請負代金内訳書は打ち合わせ通りの内容か
- 記名・捺印されているか
- 収入印紙が貼ってあるか
請負契約約款
請負契約約款とは、業者が契約に関する事項を取り決めている書類です。
契約書にはない詳細な事項が記載されています。
大概の場合、請負契約約款は字が小さく、文章も難しく、目を通すのが面倒なのが特徴の契約書です。
しかし、判子を押すという事は読んで納得した証です。あとで『ここに書いてあります』と言われて後悔することのないように、時間は長くなりますがその場できちんと読んで、分からない点は納得できるまで質問しましょう。
請負契約約款では、最低限注意したい4つのポイントがあります。
遅延損害金
工事完了が遅れた場合、業者が注文者であるあなたに支払う金額です。
また、注文者も請負代金の支払いが遅れた時には業者に支払うことです。
住宅リフォーム推進協議会の約款と住宅金融公庫監修の約款では、ともに年14.6%と設定されています。
民間(旧四会)連合協定の約款は、1日1万分の4としていますが年率にすると14.6%となり同様です。
瑕疵担保責任
瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)は、工事が終わった後、当初は分からなかった欠陥が分かった時、無料で補修してくれる約束です。
保証の範囲と期間が確認のポイントです。
ただ外壁塗装の場合、塗膜の剥がれなどは瑕疵担保責任の範囲外とされているケースが多いです。
業者が保証としているケースでもありますので、よく確認するようにしましょう。
通常の場合、工事後(1〜5年間)に発生した工事瑕疵による補修費用を、この瑕疵担保保険で賄えます。
また、施工後に注文した塗料でないことが判明することや、イメージと違う色になってしまうといったこともあります。
その際にも業者側の瑕疵が問題になるケースががありますので、要注意の項目です。
紛争の解決
万が一紛争が起きた時、どの裁判所で行われると書かれているかがチェックポイントになります。
建築現場所在地と定めるのが一般的ですが、業者の本社所在地とある場合もあり、この場合には、裁判のためにその場所まで行かななくてはなりません。
遠方だとわざわざ出向くことになりますので、それだけで不利です。
このような約款は業者に都合の良い契約書だと判断できます。変更を申し入れるようにしましょう。
クーリングオフ
外壁塗装でも、契約後8日以内であればクーリングオフが有効になります。
たとえ、8日以内ですでに塗装工事が始まっていたとしても8日以内であれば業者は契約解除後、原状復帰まで行う義務があります。
ちなみにクーリングオフを行う際は、ハガキなどの書面による手続きが必要です。
記載内容は以下の9点です。
- 契約(申し込み)年月日
- 事業者名
- 担当者名
- 商品名
- 契約金額
- 契約を解除する旨を記載(理由は書かなくてもよい)
- 書面発行日
- 自分の住所
- 自分の名前
請負代金内訳書
- 日付
- 業者の住所
- 見積金額
- 工事の詳細
請負代金内訳書とは、最終の正式な見積書です。工事の内容と金額が分かります。
設備や仕様ごとの細かな金額が記載されています。
『見積書』『見積もり明細書』『見積もり明細内訳書』という名称で呼ばれることもあります。
業者によっては保証書も発行してくれる
業者によっては保証書(工事保証)を発行してくれる所もあります。
保証書には、工事の不具合(塗膜の早期剥がれや浮き、保証期間など)に関する項目が記載されています。
ただ全ての業者が工事保証を付与してくれるわけではありません。
工事保証をうたっていても、保証書を発行していない業者もあります。
消費者側からすると、書面で残すことが安心材料にもなりますので、保証書を発行してくれる業者を選ぶことをおすすめします。
ちなみに塗料の品質に関する保証は工事保証ではなくメーカー側の保証で対応することです。
メーカー保証も全てのメーカーで付与されるわけではありません。
大手塗料メーカーでいうと、保証が付くのは日本ペイントのみです。
契約書にまつわるトラブル事例
近所の公共施設で施工経験しているという業者が夕方に訪問してきた。承諾していないのに屋根にはしごをかけ屋根を確認し、「瓦に問題があるので、すぐ工事しないといけない」と契約を迫られ、契約書に署名してしまった。業者からなかなか契約書の控えが届かず、届いたものを確認したら修正液で金額が直されていた。
最近の相談事例 | 国民生活センター
契約書にまつわるトラブルでは、契約書に『工事一式』、工事着工日が『吉日』など正式な契約書を作ってくれないケースや、業者都合のキャンセルについて記載がないなどがあります。
契約書にまつわるトラブルのほとんどの原因が契約書をよく確認することなく署名・押印したことによる不注意にあるわけですが、これは業者の即決強要のプレッシャーがトラブルのそもそもの発端となっています。
『今日がキャンペーン最終日です』などと魅力的なセールストークで即決を迫ってくることで契約書の確認が疎かです。
特に訪問販売業者に多い手口になりますので十分に注意しましょう。
契約前に契約書の確認は必ず行いましょう
請負契約約款
請負代金内訳書
工期や約款についても確認しましょう。
外壁塗装を契約する際には、今回紹介した4点(工事請負契約書、請負契約約款、請負代金内訳書、保証書)に必要事項が正確に記載されているかよく確認するようにしましょう。
また、塗装工事が始まってからも、何か変更が出るたびに書面にして確認することが大切です。
なお、外壁塗装工事に助成金を支給している自治体もありますが、業者からの請負代金内訳書(見積もり書)の写しや領収書も提出の必要があるので必ずもらうようにしましょう。
外壁塗装の業界は本当にトラブルが多いので、言った言わないの水掛け論は、契約書を取り交わすことで防ぐことができます。
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